新しい現場がはじまっています。

  • 2019年3月22日
  • Blog
  • by koike

この地域の方々は林縁部の限られた土地に、自分たちの文化・風習にのっとり墓地を作りました。
当時は若く小さかった木の周りにお墓を建て,それからは樹木を避けるように墓石を遠くへ遠くへと作って来ましたが、
長い年月の中で、樹木の成長と共に古い墓石は地下から持ち上げられ、傾き、倒れ、今では地面で苔に覆われているものもあります。
近年に設置された墓石の中にも、傾斜が原因でお骨を納められなくなってしまったものもありました。
人の暮らしや文化と、樹木の生育に必要な環境のせめぎあいが起きているのです。
様々な摩擦を内包しながら、この木は樹高30m、幹回り6m超という大きさに成長し、枝下の範囲には大小100基ほどの墓石がひしめいています。雪などによる枝折れや枯れ枝の落下などのリスクもありました。

このご依頼がもたらされたとき、関係者の方々や和尚さんからこの木の記録や思い出話しをお聞きし、現状と未来の環境をなどを鑑みながら、伐採という方針を固めてゆきました。
皆さんが伐採を決断された後の祭事の折には、集まった村の方々それぞれがこの木の傍らに立ち、「ありがとうございました」と手を合わせておられました。
この木は人間の暮らしと共に生きてきた木だったのだなと、心打たれるものがありました。

今回は看取る仕事となりましたが、伐採された樹木の幹や枝は建築物の素材となるものや、燃料として人の暮らしを暖めるもの、工芸等の材料になるものなど、様々に利活用されることで活き方を変えてゆきます。私たちが樹木の利活用の方法開拓に力を入れてきたのはこのためです。

人々の心の中に生まれる次の「ありがとうございました」の為に、次の100年、200年を生きる樹木との出会いをもとめながら、人と木の間にかかる橋の姿を、探し、見つめていきたいと思っています。


投稿者
koike