CODIT理論

CODIT理論とは、アメリカのAlex L.Shigoという樹木生理学者が提唱したCompartmentarization Of Decay In Trees(樹木腐朽の区画化)の略称です。

樹木は傷口から内部に腐朽菌が侵入して組織が腐朽するのを防ぐために、自ら「防護壁」を作る働きがあります。防護壁の外側は腐朽菌に侵され枯れてゆきますが、この防護壁によって内部の木質は守られます。
樹木には上記のような「区画化」の働きが部位によって強い所と弱い所があり、この働きの強い所で剪定すれば切り口は守られ、腐朽が内部まで進行するのを防ぐことができるのです。

樹木は切断された傷口を塞ぐために、かさぶたのように樹皮を巻いていきます。これをカルスといい、理想的ラインで切断された枝(の根本)は均等にカルスが巻き、傷口がきれいにふさがってゆきます。そうでないラインで切断された枝は「区画化」の働きを持つ細胞のあるところまで枯れ下がり、切断されて枯れた枝がカルス形成の邪魔をするため、腐朽が幹の内部にまで進行し、幹の芯を腐らせてしまいます。これにより樹木の空洞:ウロが発生し、樹体の強度を失う原因にもなっていきます。

参考文献

CODIT理論原典

樹勢回復における菌根菌接種などの生育環境改善
菌根菌接種

農薬等は使わず本来松樹が共生菌として利用している菌根菌を根に接種して、松樹を健康にすることにより守っていこうとする環境にやさしい方法です(但し、この方法は樹勢は改善しますが、マツ材線虫病への治療効果はありません)。使用する菌根菌は場所により異なりますが、ヌメリイグチ[学名:S.luteus(L.:Fr.)S.F.Gray]チチアワタケ[学名:Suillus granulatus(L.:Fr.)O.Kuntzeショウロ、学名Rhizopogonrubescens(Tul.)Tul.]等です。特殊な松粒炭に上記の菌根菌を接種し、発根処置を施した根に接種するものです。施工にあたっては、アカマツ、クロマツ、ゴヨウマツ等種類、植栽されている場所によって使える菌根菌が違いますので専門的な知識が必要です。
施工方法はの重要なポイントは、菌根菌は新しい根にしかつきませんので根系処置(根の剪定による発根処置)、特定環境(専用炭等で剪定根を覆う)をつくる等効果的な土壌改良処置が必要です。正しい施工方法を広めるために施工にあたっては専門的な教育を受けた全国の「菌根ネットワーク会員」が指導を行っています。特に、使用される胞子液は、保存が難しく、胞子数など仕様が確定している資材を使用しないと確実な効果が得られません。正しい施工を行うと樹勢回復に効果的であり、菌根菌接種法は「自然の理にかなった方法」として今後色々な樹種に応用されていきます。

原典:松枯れ防止ネットワーク

野外で生育する樹木の根には、植物の成長を助ける菌が感染して「菌根」(詳細は後述)を作 ります。これら菌根を形成する菌は菌根菌と呼ばれ、土壌中に普通に存在しており、植物の根に 容易に感染します。しかし、自然災害などの影響を受けて土壌中の菌根菌が消失している場合 には、防災のために植栽した苗に菌根が形成されず、苗の生育や定着が不良になるなどの問題 が生じる場合もあります。そのようなとき、人為的に菌根菌を感染させた苗を用いる方法によって、 植物の生育を画期的に向上させることが可能になります。 これまで我が国においては、鹿児島県桜島や長崎県雲仙普賢岳、東京都三宅島などの火山 噴火被災地で菌根菌感染苗の植栽試験が行われ、菌根菌の感染により苗木の定着と成長量 が向上しました。また、滋賀県田上山の斜面崩壊地では、菌根菌の感染によって定着率が高く なりました。京都府京丹後市の海岸では、菌根菌を感染させた苗木を用いて造成した砂防林が 砂防機能を十分に発揮しています。海外においても、アメリカの鉱山跡の荒廃地、モンゴルの森 林火災跡地さらに中国の荒廃地での植生の回復に菌根菌感染苗の活用による効果が認めら れています。このように菌根菌の機能を活用することによって、森林の再生や植生の回復が早 期に達成され、地域住民にとって安心で安全な生活を確保することができます。

原典:菌根形成・管理マニュアル